はじめに
今回は、住所変更登記等の必要書類について触れたいと思います。
「住所変更登記等」とは、以下のケースにおいて必要となる登記手続きのことをいいます。
- 自然人の住所変更
- 自然人の氏名変更
- 法人の住所変更(本店移転)
- 法人の名称変更(商号変更)
住所変更登記等の必要書類について
登記の必要書類についてケース別にまとめると、以下のとおりです。
自然人の住所変更のケース
登記簿上の住所が現住所の直前の住所である場合
・住民票(又は戸籍の附票)
住民票は、「住所地」を管轄する市区町村役場の窓口で発行されます。
戸籍の附票は、「本籍地」を管轄する市区町村役場の窓口で発行されます。
※住民票上の「前住所」の欄に登記簿上の住所が記載されていれば、住所がつながったことになります。
登記簿上の住所と現在の住所との間に複数回の転居(住所変更)がある場合
・戸籍の附票(又は登記簿上の住所と現住所をつなぐ住民票・住民票除票)
ところで、登記簿上の住所から複数回にわたって転居・引越しがされているケースもあります。
そのようなケースでは、現住所の住民票だけでは、住所のつながりを証明できません。
現住所の住民票のほか、登記簿上の住所に係る住民票除票等も必要になります。
つまり、転居・引越しが多いほど、多くの市区町村役場から住民票・除票を取り寄せることになり、手間がかかります。
そこで、住民票に代えておすすめなのが、「戸籍の附票」です。
【「戸籍の附票」(以下「附票」)とは】
本籍地の市区町村役場で発行される証明書になります。
附票には、当該戸籍(本籍)に在籍している間の住所の移転履歴(住所及び住所移転日等)が記載されます。
転籍がされているケースでは、新本籍地・旧本籍地において、それぞれ附票が発行されます。
また、戸籍の改製がされているケースでは、現在の戸籍・原戸籍ごとに附票が発行されます。
なお、原戸籍については、保存期間の満了により廃棄がされているケースがあります。
(詳細については、本籍地の市区町村役場に問い合わせて確認しましょう。)
住居表示実施による場合
・住居表示実施証明書
「住所地」を管轄する市区町村役場の窓口で発行されます。
【住居表示実施とは】
端的にいうと、法律や条例に基づき住所の表記が変更されることをいいます。
住居表示実施「前」の地域においては、「〇市〇町〇番地〇」というような住所表記(地番表記・地番表示)が一般的です。
一方で、住居表示実施「後」においては、「〇市〇町〇番〇号」というような住所表記(住居表示)に変更されます。
住居表示が実施されていれば、土地の分筆・合筆による地番表記の変更がされた場合でも、住所の特定に混乱・支障をきたすおそれがなくなります。
町名地番変更による場合
・町名地番変更証明書
「住所地」を管轄する市区町村役場の窓口で発行されます。
【町名地番変更とは】
地番の混乱の解消やまちのイメージアップを図るため、土地区画整理事業や大規模な宅地造成等に合わせて町名及び地番が変更されることをいいます。
※町名地番変更のイメージは、以下のとおりです。
(変更前)A市B町〇番地〇
→ (変更後)A市C町〇丁目〇番地〇
【行政区画の変更について】
町名地番変更に似たものとして、「行政区画の変更」というものがあります。
市町村合併・政令指定都市となったこと等により、住所表記が変わるケースがこれにあたります。
具体的には、「A市C町」だった住所表記が、「A市B区C町」のように変更されることをいいます。
なお、行政区画の変更には、地番変更を伴うケースと地番変更を伴わないケースがあります。
なお、地番変更を伴う行政区画の変更では住所変更登記が必要になります。
(行政区画変更証明書・町名地番変更証明書が必要になります。)
自然人の氏名変更のケース
・戸籍謄本又は戸籍抄本(登記名義人が被証明者となっているもの)
→婚姻前や養子縁組前の氏名の記載のあるものが必要となります。
(登記簿上の氏名と現在の氏名の変遷を確認できる必要があります。)
戸籍謄本等は、「本籍地」を管轄する市区町村役場の窓口で発行されます。
法人の住所変更(本店移転)のケース
・対象法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書等)
履歴事項全部証明書は、全国どこの法務局でも発行されます。
閉鎖事項全部証明書は、(当時の)本店所在地を管轄する法務局でのみ発行されます。
※複数回の本店移転があれば、登記簿上の本店と現在の本店の履歴を確認できる証明書を揃えます。
法人の名称変更(商号変更)のケース
・対象法人の登記事項証明書(履歴事項全部証明書・閉鎖事項全部証明書等)
※複数回の商号変更があれば、登記簿上の商号と現在の商号の履歴を確認できる証明書を揃えます。
注意点(各変更登記に共通)
各種証明書については、住所等のつながりを確認できるものが必要です。
(登記簿上の住所等と現在の住所等の変遷を確認できるものが必要です。)
市区町村における保存期間の満了により、証明書の発行ができないケースもあります。
市区町村の証明書だけで住所のつながりを証明できないケースでは、別途書類の提供が求められることがあります。
具体的には、次のような書類が必要になるのが一般的です。
(管轄法務局によって追加で求められる書類が異なります。)
- 不在籍証明書
- 不在住証明書
- 対象不動産の登記済権利証
- 固定資産税納税通知書
そのため、手続きを進めるにあたり、あらかじめ管轄法務局に確認をしましょう。
その他(登録免許税等)
住所変更登記等では、登録免許税(法務局へ納める収入印紙代)が必要です。
登録免許税の金額は、不動産の個数×1,000円になります。
ただし、住居表示実施や町名地番変更の場合には、登録免許税はかかりません。
次回は、住所変更登記等の義務化に伴い新設される「職権登記制度」について書きたいと思います。
※次回記事:住所変更等の職権登記制度とは