不動産・預貯金・株式等の相続財産の調査について

投稿日: 2022-06-07

はじめに

相続が発生したら、手続きを行うべき財産を把握していることが前提となります。
被相続人の生前から財産状況を相続人が把握していれば特に問題はありません。
しかし、残念ながらそのようなケースはまれです。
相続人の方で把握できていない以上は、財産調査を行うほかありません。
そこで、今回は、財産調査の概要についてご説明します。
(ここでは、不動産・預貯金・株式等の財産調査について取り扱います。)

不動産の調査方法・留意点について

まずは、不動産の調査方法・留意点について見ていきます。

被相続人名義の不動産の関係書類

不動産を特定のための手がかりとなる書類としては、以下のものになります。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本)
  • 権利証(登記済権利証)
  • 固定資産税の納税通知書(固定資産評価証明書)
  • 名寄帳

登記事項証明書・権利証

被相続人名義の不動産については、登記事項証明書や権利証に氏名が記載されています。
通常、登記事項証明書や権利証に被相続人の氏名があれば、相続財産である可能性が高いです。
ただし、不動産を処分(第三者)へ売却している可能性もあるので、念のため、最新の登記簿で権利関係を確認しておきましょう。

固定資産税納税通知書(固定資産評価証明書)・名寄帳

登記事項証明書・権利証の他、固定資産税納税通知書・名寄帳も確認しておきましょう。

固定資産税納税通知書には、固定資産税の課税対象となる不動産の情報が記載されています。
(法務局の手続きでは、別途固定資産評価証明書が必要になることが多いです。)

なお、固定資産税が非課税となる物件については記載がされない点には要注意です。
(公衆用道路(いわゆる私道)のような土地が代表例です。)

そこで、取得をおすすめしたいのが、名寄帳です。
名寄帳は、ある市区町村に存在する固定資産を名義人ごとに名寄せ(紐づけ)して証明する書類です。
注意すべきなのは、名寄帳は市区町村の窓口ごとに発行されるという点です。
仮に、複数の市区町村に不動産を所有していても、市区町村単位でしか把握ができません

※関連記事:「所有不動産記録証明制度について」

預貯金の調査方法・留意点について

次に、預貯金の調査方法・留意点について見ていきます。

被相続人名義の通帳を確認

相続財産たる預貯金を特定するにあたっては、まず手元にある通帳を確認しましょう。
また、近年のペーパーレスの流れから、取引情報がネット上の通帳に一元化されているケースもあります。
紙の通帳が存在しない場合には、郵便物や他の情報をもとに取引のある金融機関がないか、確認しましょう。

金融機関へのヒアリング・残高証明書の請求

取引のある金融機関には、照会先の支店以外の店舗とも取引がないかヒアリングをしましょう。
また、預貯金のほか、投資信託等の金融資産に関する取引が存在する可能性もあります。
取引支店・取引内容を特定出来たら、次に、残高証明書の発行請求をしましょう。
相続発生日時点のもの請求日直近のものの2種類を請求しましょう。)

取引履歴の確認

通帳の中に記帳がされていない期間の取引については、おまとめがされ、取引の詳細を確認できません。
取引履歴から、相続人や第三者への生前贈与や貸付の事実が発覚することもあります。
そのため、残高証明書のほか、取引履歴明細書を取得することをおすすめします。

貸金庫の確認

預貯金の照会・残高証明書の取得と並行して、貸金庫の有無を確認しましょう。
貸金庫には、他の支店・金融機関の通帳や遺言書が保管されているかもしれません。

名義預金について

被相続人名義の預貯金のほか、名義預金にも要注意です。
外観上は被相続人以外の名義(主に相続人名義)であるものの、実態は被相続人の財産とみなされる預貯金がこれにあたります。
父親が子が知らないところで子名義の口座を作って入金をしていたケースが代表例です。

名義預金についても、遺産分割協議を経た上で相続手続きが必要です。

また、名義預金は相続税の申告対象にもなるので、要注意です。

名義預金と認定されるためには、様々な要素を加味することになりますが、ここでは説明を割愛します。

株式の調査方法・留意点について

被相続人名義の株式の有無についても調査が必要となります。
株式については、上場企業・非上場企業のいずれの株式かにより、調査方法が異なります。

上場企業の株式(上場株式)について

まず、被相続人名義の上場企業の株式の調査方法についてご説明します。
上場株式については、株式会社証券保管振替機構へ照会を行うことが可能です。
登録加入者情報の開示請求手続きという手続きになります。)

本手続きにより、上場株式等にかかる口座が開設されている証券会社・信託銀行の口座管理機関名の確認が可能です。

ただし、取引履歴・保有残高等の情報まで確認できるわけではありません。
保有株式の詳細については、証券会社・信託銀行へ問い合わせましょう。
(具体的には、取引残高証明書の発行を依頼する方法が考えられます。)

非上場企業の株式(非上場株式)について

当然ながら、証券会社・信託銀行では、非上場株式の取り扱いはありません。
証券保管振替機構のような第三者機関(証明機関)もありません。
そのため、遺品の中から手がかりとなる書類を探す必要があります。

被相続人名義の非上場株式を発見したら、発行会社へ相続の事実を伝えましょう。
その際に、対象株式の名義変更(名義書換)のための必要書類や手続きについて確認を取りましょう。

もし、発行会社から相続人等に対する株式の売渡請求を受けた場合には、株式を相続できません。
この場合、株式を売り渡すことと引き換えに、売買代金が支払われることになります。
詳細については、「非上場株式の譲渡・相続について」をご確認ください。

投資信託について

投資信託についても、証券保管振替機構の開示請求手続きの対象外となります。
通常、投資信託の取引があれば、四半期に一度「取引残高報告書」が送られてきます。
遺品の中に被相続人名義の投資信託の取引がないか確認しておきましょう。

終わりに

今回取り上げたほか、保険・自動車・お墓といった財産についても手続きが必要になることもあります。
窓口によって、手続きの流れ・必要書類が異なります。
二度手間にならないよう、財産調査の段階から窓口へ確認を取り、手続きをスムーズに進めましょう。