相続登記義務化に伴う過料・経過措置について

投稿日: 2022-04-22

はじめに(過料とは?)

今回は、相続登記の義務化に伴う過料経過措置についてお話します。

「過料」とは、法律秩序を維持するために、法令に違反した場合に制裁として科せられる行政上の秩序罰のことをいいます。

(「罰金」・「科料」のような刑事罰とは異なります。)

「正当な理由」がないのに登記申請義務に違反した場合、法務局からの通知に基づき、申請義務違反を把握した裁判所が過料に処するか否かの判断を行う形になります。

過料の金額は「10万円以下」と定められているので、申請義務違反の程度を加味して金額が決定されるものと思われます。

裁判所が過料の決定をしたあとに、義務違反を行った相続人等に過料の通知文書が送られます。

申請期限を過ぎたら必ず過料の対象になるのか

相続登記の申請期限を超過する等の申請義務違反があった場合、必ず過料の対象になるかといえば、決してそうではありません。

過料について定める不動産登記法の条文上も「正当な理由」がない場合を対象としているからです。

どのような場合に「正当な理由」があると判断されるのか気になるところですが、結局のところ、当局の判断によることになります。

ただ、当局により恣意的な運用がされることのないように、「正当な理由」の具体的な類型については、通達等であらかじめ明確化されるものと考えられます。

「正当な理由」の具体例

「正当な理由」があると考えられる場合の例としては、以下のようなケースがあげられます。

  1. 数次相続が発生して相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の必要な資料の収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケース
  2. 遺言の有効性や遺産の範囲等が争われているケース
  3. 申請義務を負う相続人自身に重病等の事情があるケース

また、過料を科する際の具体的な手続についても、事前に義務の履行を催告するなど、公平性に配慮した対応が重要だと考えられます。

例えば、履行期間経過後でも催告に応じて登記申請がされれば裁判所に過料通知はしないこととする等、柔軟な運用がされることを期待したいところです。

とはいえ、無用なリスクを回避する意味でも、相続が発生したら、後回しにするのではなく早い段階から相続登記等の準備に着手するようにしましょう。

いつの相続からが対象(相続登記の義務化に伴う経過措置)

次に、相続登記の義務化に伴う経過措置(いつ発生した相続から適用されるのか)についてお話します。

結論から申し上げると、相続登記義務化の前に発生した相続にも、登記の申請義務は課されることになります。

つまり、改正法の施行前の相続でも相続登記等の申請義務があることになります。

ただ、申請義務の履行期間のカウントについては、改正法の施行前からスタートしないように配慮がされております。

具体的には、改正法の施行日と相続登記等の申請義務の要件を充足した日のいずれか遅い時点から法定の期間(3年間)のカウントがスタートすることになります。

相続登記の申請期限はいつからカウントするのか

相続登記の申請期限(3年間)がいつからカウントされるのかという点について整理すると以下のようになります。

  1. 改正法施行日(令和6年(2024年)4月1日)よりもに相続が発生しているケース
    施行日である令和6年(2024年)4月1日からカウント
  2. 改正法施行日(令和6年(2024年)4月1日)よりもに相続が発生しているケース
    相続登記等の申請義務の要件を充足した日からカウント

いずれのケースであっても、最低3年間の時間的猶予はあるので、相続が発生したらすみやかに手続きに着手するようにしましょう。