商号の使用に関する制限について

投稿日: 2022-06-13

はじめに

商号に使用可能な文字・符号であれば、必ず登記ができるとは限りません。
無制限・自由な使用を認めると社会的に不都合が生じるケースもあります。
そのようなケースを想定し、法令・実務上、商号使用にも一定の制限があります。
今回は、商号の使用に関する制限について触れます。
※前回記事:商号の登記で使用可能な文字・符号等について

会社の種別・法令による使用の制限

第三者に誤認を生じるおそれがある文字等については、使用が制限されることがあります。

会社の種別による使用制限

まず、会社の種別による使用制限について触れます。
法令上、商号中に法人の種別に応じた文字を表示することが義務付けられています。
株式会社であれば「株式会社」という文字を商号の中で用いる必要があります。
同じく、合同会社であれば「合同会社」という文字を商号の中で用いる必要があります。
(例えば、「合同会社」であるにもかかわらず、「株式会社」という文字を用いることは認められません。)

法令による使用制限

会社の種別のほかにも、商号の使用が制限される場合があります。
一定の公益性の高い事業については、法令上、当該事業者であることを商号中に表示すべきとされています。
公益性の高い事業としては、以下のようなものがあげられます。

  • 銀行業(商号中に「銀行」等の文字を表示する義務がある)
  • 保険業(商号中に「保険」等の文字を表示する義務がある)
  • 信託業(商号中に「信託」等の文字を表示する義務がある)

逆に、上記の事業を行わない会社・法人は、上記事業者と誤認されるおそれのある文字を商号中に表示することは認められません。
(例えば、銀行業を行わない会社が「株式会社●銀行」という商号を用いることはできません。)

公序良俗に反する商号の使用の禁止

上記のほか、公序良俗に反する商号については、使用が禁止されています。
「公序良俗」とは、公の秩序・善良の風俗のことをいいます。
端的にいえば、社会正義に反する商号社会的に不当な商号は使用できないということです。

まず、社会的に望ましくない文字・表現を含んだ商号の使用は当然に認められません。

また、会社の事業目的とはかけ離れた文字・表現の使用についても規制対象となります。
(例えば、民間の事業者が「公益社団」というような文字を用いるケースです。)

同一商号・同一本店の禁止

会社・本店(会社の住所)が完全に一致する会社を登記することは認められません。
例えば、「中野区中野七丁目7番7号」という住所にある「ABC株式会社」があるとします。

  • 「中野区中野七丁目7番7号」という住所に「ABC株式会社」を登記すること:不可
  • 「中野区中野七丁目7番7号」という住所に「株式会社ABC」を登記すること:可
  • 「渋谷区渋谷五丁目5番5号」という住所に「ABC株式会社」を登記すること:可
  • 「渋谷区渋谷五丁目5番5号」という住所に「株式会社ABC」を登記すること:可

「株式会社」という種別も商号の一部として扱われます。
(「ABC株式会社」と「株式会社ABC」は別の商号と判断されます。)

ただし、登記が認められても、商標法や不正競争防止法上の問題が生じるケースもありますので、注意しましょう。

その他の使用制限

商号中に「支社」・「出張所」という文字を用いることは認められていません。
また、「事業部」・「販売部」というような会社の一部門のような文字を用いることも認められないのが一般的です。
一方で、「代理店」・「特約店」という文字を用いることは認められています。
上記の制限は、法務省の先例によるものとなります。
そのため、将来取り扱いが変更される可能性もゼロではありません。

終わりに

会社・法人の商号は、取引先等の第三者に誤認を生じるものであってはなりません。
事案によっては、誤認を生じるおそれがあるかどうか判断が難しいケースも少なくありません。
商号の使用に疑義が生じるおそれがあるなら、あらかじめ法務局へ照会する等の対応が望ましいです。