はじめに
相続発生後に被相続人に借金があったことが発覚するケースもあります。
いったん相続を承認したら、もはや相続放棄を選択することはできません。
そのため、相続手続きに先立って、相続財産の調査をしておくことが重要です。
今回は、相続財産調査のうち、借金等の債務の調査方法について、触れたいと思います。
借金等の債務の調査方法(信用情報調査等)
被相続人の借金等の債務の調査方法としては、信用情報調査を行うのが一般的です。
具体的には、信用情報機関に必要書類を提出して、信用情報の開示請求を行います。
信用情報機関として、主に以下の3社があげられます。
- JICC(株式会社日本信用情報機構)
- CIC(株式会社シー・アイ・シー)
- 全国銀行個人信用情報センター(KSC)
以下、信用情報機関の概要・開示対象の信用情報について整理しておきます。
JICC(株式会社日本信用情報機構)
消費者金融会社、クレジット会社、信販会社、金融機関、保証会社、リース会社等、与信事業を営む幅広い事業者が加盟している信用情報機関です。
主に、加盟事業者のローンやクレジットなどの契約内容や返済状況等に関する情報が開示の対象になります。
CIC(株式会社シー・アイ・シー)
主に割賦販売や消費者ローン等のクレジット事業を営む企業を会員とする信用情報機関です。
CICに加盟するクレジット会社等と契約した、クレジットやローン等の契約内容や支払状況、残高等の情報が開示の対象になります。
https://www.cic.co.jp/mydata/index.html
全国銀行個人信用情報センター(KSC)
一般社団法人全国銀行協会(JBA/全銀協)によって運営されている信用情報機関です。
銀行等の金融機関(メガバンク・地方銀行・ネット銀行・信用金庫・信用組合)が加盟しています。
こちらは、金融機関の顧客への貸付等の情報が開示の対象になります。
https://www.zenginkyo.or.jp/pcic/open/
信用情報調査でどこまでわかるのか
信用情報機関への信用情報調査だけ行っても安心してはいられません。
なぜなら、信用情報調査だけでは、全債務を把握できるとは限らないからです。
あくまで、信用情報機関から開示されるのは、金融機関をはじめとする事業者への債務にすぎません。
例えば、以下のような債務については、信用情報調査では調査ができません。
- 債権回収会社へ債権譲渡された債務
- 個人間の貸し借りに基づく債務
- 連帯保証債務
- 損害賠償債務
なお、各債務の詳細については、取引先から取引履歴明細書等の資料を取り寄せることにより確認が可能です。
信用情報調査以外に考えられる債務の調査方法
もちろん、信用情報調査以外にも、債務を調査する手段はあります。
その一例として、以下のような調査方法があげられます。
- 不動産登記簿の中に担保が残されていないか(債務が残っていないか)調査する
- 遺品の中に貸し借りに関する資料がないか確認する
- 被相続人の家族・親族・同居人・知人友人等への聞き込み・ヒアリングを行う
- 預金通帳の記載内容から貸し借りが推認される取引の有無を調査する
- 被相続人宛の郵便物の中から貸し借りが推認される取引の有無を調査する
終わりに
特に、相続放棄を検討している方であれば、なおさら早期の債務調査が重要となります。
一方で、相続放棄の申立期間内に調査を済ませることが難しいケースもあります。
調査に時間がかかりそうな場合には、家庭裁判所への熟慮期間伸長の申立てを検討しましょう。
なお、相続放棄の期間や必要書類等については、「相続放棄の申立期間・必要書類・注意点等について」をご確認ください。