外国会社の登記について

投稿日: 2022-07-12

外国会社の登記義務について

まず、外国会社とは、外国の法令に準拠して設立された法人その他の外国の団体であって、会社と同種のもの又は会社に類似するものをいいます(会社法第2条第2号)。

外国会社が日本において継続して取引をしようとするときは、日本における代表者を定め、当該外国会社について登記をすることが必要となります。

法律上、外国会社の登記をするまでは、日本において取引を継続してすることができません。
これに違反して取引を行った者は、取引の相手方に対して、外国会社と連帯して、当該取引によって生じた債務を弁済する責任を負います。

なお、外国会社の日本における代表者は、その全員が日本に住所を有する必要はなく、一人以上が日本に住所を有していれば足ります(会社法第817条第1項)。

日本における営業所設置の要否について

外国会社は、必ずしも日本国内に営業所を設けなくても、日本において継続的取引をすることができます。
日本国内に営業所を設けない場合には、日本における代表者の住所地において、外国会社の登記を行えば足ります。
一方で、日本国内に営業所を設ける場合には、日本国内の営業所の住所地において外国会社の登記を行うことになります。

外国登記申請手続等について

登記すべき事項

外国会社の登記においては、日本における同種の会社又は最も類似する会社の種類に従い、株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社の設立の登記事項(会社法第911条第3項各号又は第912条から第914条までの各号に掲げる事項)を登記するほか、次の事項を登記しなければなりません(会社法第933条第2項)。

  1. 外国会社の設立の準拠法
  2. 日本における代表者の氏名及び住所
  3. 日本における同種の会社又は最も類似する会社が株式会社であるときは、準拠法の規定による公告方法
  4. 上記3の場合において、貸借対照表を電磁的方法により開示するときは、貸借対照表の内容である情報が掲載されているウェブページのアドレス
  5. 公告方法についての定めがあるときは、その定め
  6. 電子公告を公告方法とするときは、電子公告により公告すべき内容である情報が掲載されているウェブページのアドレス等
  7. 上記5の定めがないときは、官報に掲載する方法を公告方法とする旨

なお、外国会社の日本における代表者として、法人を登記することもできます。

また、外国会社の日本における代表者として弁護士等を定めた場合には、その住所として、当該弁護士等の事務所の所在場所を登記することもできます。

申請人

外国会社の登記申請については、日本における代表者が行います(商業登記法第128条)。
なお、本国における代表者には、外国会社の登記申請を行う権限はありません(昭和44年1月14日民甲第32号回答)。

添付書面

申請書には、次の書面を添付しなければなりません(商業登記法第129条第1項・第2項・第18条)。

  1. 本店の存在を認めるに足りる書面(官庁の証明書・定款等)
  2. 日本における代表者の資格を証する書面(会社の任命書・契約書等)
  3. 外国会社の定款その他外国会社の性質を識別するに足りる書面
  4. 公告方法についての定めがあるときは、これを証する書面(日本における代表者作成の証明書等)
  5. 代理人によって登記を申請するときは、その権限を証する書面
  6. 上記1~5の各書面が外国語で作成されているときは、日本語における訳文(翻訳文)

上記の書類は、外国会社の本国の管轄官庁又は日本における領事その他権限がある官憲の認証を受けたものでなければなりません。

外国会社の日本における代表者として法人を登記する場合には、当該法人の登記事項証明書で作成後3ヶ月以内のものの添付が必要となります。
(当該法人の本店若しくは主たる事務所の所在地を管轄する登記所に申請するとき又はその申請書に会社法人等番号を記載したときを除きます。)

外国会社の日本における代表者として弁護士等を定めた場合において、その住所として当該弁護士等の事務所の所在場所を登記するときは、別途、同一人であることを確認できる書面の添付が必要となります。

印鑑の提出等について

外国会社の登記を書面により行う場合には、印鑑の提出が必要なのが原則です。

ただし、日本における代表者が外国人である場合には、外国人ノ署名捺印及無資力証明ニ関スル法律の規定により、印鑑の提出は任意のものとなります。
印鑑の提出を行わない場合には、登記申請の都度、申請書又は委任状への記名押印に代えて署名を行い、当該署名が日本における代表者本人のものであることについて本国官憲が作成した証明書(署名証明書・サイン証明書等)が必要となります。

なお、当該証明書に関する本国官憲の範囲の解釈・取扱いの詳細については、以下のページをご確認ください。

※参照:外国人・海外居住者の方の商業・法人登記の手続について/署名証明書について(法務省HP)

法務局の管轄等について

管轄(日本国内に営業所を設けないケース)

このケースでは、日本における代表者住所地において外国会社の登記を申請する必要があります。
なお、日本における代表者(日本国内に住所を有する者)を複数定めた場合には、すべての代表者の住所地において、外国会社の登記を申請する必要があります。

管轄(日本国内に営業所を設けるケース)

会社法は、外国会社の日本における営業所に主従をつけていないことから、外国会社の登記は、すべての管轄登記所においてすべての登記事項を登記しなければなりません。

登記申請期限について

日本国内に営業所を設けないケース

国内に営業所を設けないケースでは、日本における代表者を定めた日から3週間以内に、外国会社の登記の申請をする必要があります。

日本国内に営業所を設けるケース

一方で、国内に営業所を設けるケースでは、営業所設置の日から3週間以内に、外国会社の登記の申請をする必要があります。

登録免許税

外国会社の登記の登録免許税については、以下のとおりとなります。

日本に営業所を設置していない場合の外国会社の登記

申請1件につき、6万円

当該営業所を設置していない外国会社が初めて設置する1の営業所の設置の登記

申請1件につき、6万円

日本に営業所を設置した場合

設置した営業所の数1箇所につき、9万円

既に外国会社の登記がある法務局においてする変更登記等

申請1件につき、9,000円

終わりに

外国会社の登記は、営業所設置の有無により、管轄や登記の進め方が異なります。
日本における代表者(日本国内に住所がある方)に変更や追加が生じた場合、法務局の管轄にも変更・追加が生じることになります。
日本国内に営業所を設置した外国会社は、その後営業所が移転すれば、営業所移転の登記も必要になります。
また、日本に進出する場合のみならず、日本から撤退する場合にも、手続きが必要になります。

最近では、外国法人の日本での未登記問題等もあるだけに、日本で取引を行う以上は、外国法人も日本において実態に即した登記が求められます。
手続きの詳細等についてご不明な点があれば、司法書士等の専門家に相談して進めましょう。