会社の事業目的と登記について

投稿日: 2022-06-29

はじめに

今回は、会社の(事業)目的と登記についてお話します。
まず、「目的」とは、会社の事業目的・事業内容のことです。
会社を設立する際には、定款に「目的」を定めて登記する必要があります。
取引先等の第三者から見て会社がどのような事業を行うのか判断するためです。また、会社の設立後に新たに事業を行う場合もあります。
そのような場合、会社の目的に新たな事業内容を追加する変更が必要となります。

目的変更の手続きの流れ

ここでは、株式会社の設立後の目的変更手続きについてご説明します。
まず、会社の定款に記載されている目的の内容を変更する決定が必要です。
具体的には、株主総会を開催して、定款変更決議を行います。
その後に、以下の書類を添えて管轄法務局へ目的変更登記を申請します。

  • 株主総会議事録(定款変更決議(目的変更決議)に関するもの)
  • 株主リスト(株主構成を記載した書面)
  • (司法書士へ委任する場合)委任状

目的を定めるにあたって考慮すべき要素

次に、会社の目的を具体的に定めるにあたって考慮すべき点について、ご説明します。

具体性

会社が目的をどの程度具体的に定めるかは、会社が自ら判断すべき事項とされています。
そのため、目的の具体性については、法務局(登記官)による審査の対象とはなりません
とはいえ、あまりに抽象的な表現では、第三者にとって不親切なものになってしまいます。

明確性

前述した「具体性」に近い概念ですが、「明確性」も目的を定めるにあたり重要な要件です。
登記実務上は、「語句の意義が明瞭であり一般人において理解可能なこと」と定義されます。
事業内容によっては、特殊な専門用語・外来語・新しい業種を示す語句等を使用せざるを得ないこともあります。
そのような場合は、国語辞典や現代用語辞典(広辞苑等)に語句の説明があるかどうかをもとに判断がされます。

なお、法令に用いられている語句は、一般的に明確性を有すると考えられています。

適法性

強行法規や公序良俗に反する事業を目的に記載することは認められません

  1. 行政庁から許認可を受ける前に許認可事業を目的に記載することの可否
    一般的に、許認可を受ける前に許認可事業を目的に記載することも認められています。
    ただし、資本金の額等が要件とされる許認可(銀行業等)については、取扱いが異なります。
    (登記申請時点で許認可の要件を満たさないことが明らかであれば、受理されません。)
  2. 資格者の行うべき事業を会社の目的に記載することの可否
    法令上、弁護士・司法書士等の資格者に限って行うことができる事業があります。
    資格者以外の者がこれらの事業を会社の目的に記載することは認められていません。
    例えば、司法書士業務を内容とする目的を会社の目的とすることはできません。
  3. その他
    前述したもののほか、許認可の種類資格の種別によって特殊な取扱いがされるケースもあります。
    また、新たな法規制が及ぶ分野の目的については、個別に判断されている例が多いようです。

営利性

株式会社は、性質上、営利を目的とした事業活動を行うことが前提とされています。

そのため、「政治献金」というような、会社において利益を取得する可能性が全くない事業を目的に記載することは一般的に認められていません

親会社・子会社の目的の記載

会社が発起人となる会社設立については、子会社設立の発起行為が明らかに親会社の目的の範囲外のものと認められない限り受理されます。
ただし、実務上は、親会社・子会社の目的の記載を合わせる例が多いです。

また、100%出資の子会社を有する親会社の目的において、以下のような記載も認められます。

「○○業を営む会社の株式を所有することにより、当該会社の事業活動を支配・管理すること」

子会社を設立する際には、親会社・子会社の目的の記載にも配慮しましょう。

実際に事業を行わない事業を目的に記載すること

会社が実際にどのような事業を行うのかという点について、法務局では審査しません。
そのため、実際に行わない事業を目的に記載することも可能とされています

もし、設立当初にA事業のみを行う予定であれば、A事業のみを目的に記載すれば足ります。
一方で、近い将来、B事業やC事業を行う予定があれば、設立の段階からB事業やC事業を目的に記載しておくことも考えられます。

終わりに

会社の「目的」は、会社がどのような事業を行うのか重要な判断基準となります。
会社と取引をする第三者会社へ出資・融資を行う第三者にとって、会社の目的は非常に重要なものです。
定款上の目的が自社の事業実態に沿ったものかどうか、今一度見直しをしてみましょう。