所有不動産記録証明制度について

投稿日: 2022-04-22

はじめに(従来における所有不動産把握の問題点)

今回は、新しい制度で導入される「所有不動産記録証明制度」についてお話します。

現行の制度では、登記記録は、土地や建物ごとに作成されており、全国の不動産から特定の方が所有権の登記名義人となっているものだけをリストアップする仕組みは存在しません。


※従来より「名寄帳」というものがありますが、名寄帳はあくまで市区町村単位での紐づけになります。従来の制度では、特定の方が所有する不動産を一元的に把握できる制度が存在しません。


特定の方が所有する不動産を一元的に把握できる制度が存在しない結果、相続登記がもれてしまう不動産が一定数存在するという問題がありました。

戸建てのケースであれば、私道の持分となっている土地、マンション・アパートのケースであれば、集会所やゴミ置場となっている建物は、相続手続きの際にも見落とされがちです。

「所有不動産記録証明制度」により不動産所有者ごとのリストアップが可能に

「所有不動産記録証明制度」の創設により、個人単位で所有する不動産のリストアップが可能となります。

従来に比べて、相続人において被相続人名義の不動産を把握しやすくなり、相続人の手続的負担を軽減することになります。

また、一部の不動産について相続登記のもれが生じるのを防止することにも役立ち、手続きをやり直すリスクを回避できます。

相続登記が義務化されることを考えると非常に有意義な制度であると言えます。

「所有不動産記録証明制度」は、法務局(登記官)において、特定の方が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化して証明するというシステムです。

仮に、特定人名義の不動産が存在しない場合には、同人名義の不動産が存在しない旨の証明がされる形になります。

所有不動産記録証明書を請求するにあたっては、対象となる方の氏名と住所を申し出る必要があります。

ところで、法務局に登録されている氏名と住所は過去の一時点のものです。

対象者の氏名・住所が昔のもので登記されている場合には、現在の(新しい)氏名や住所では、法務局での検索にヒットしないおそれがあります。

婚姻により氏が変わった場合や引越し等で住所が変わった場合には注意が必要です。

「所有不動産記録証明書」の対象・請求権者について

「所有不動産記録証明制度」は、自然人のほか法人も対象となります。

また、プライバシー等に配慮して、所有不動産記録証明書の請求可能な範囲(請求権者)を次のとおり限定することとしています。

  • 何人も、自らが所有権の登記名義人として記録されている不動産について本証明書の交付請求が可能
  • 相続人その他の一般承継人は、被相続人その他の被承継人に係る本証明書について交付請求可能

「所有不動産記録証明制度」の施行日はいつ?

「所有不動産記録証明制度」は、公布日(令和3年(2021年)4月28日)から5年以内の政令で定める日をもって施行されることになっております。

※本投稿執筆時点(令和4年(2022年)4月22日)では、施行日は未定ですが、少なくとも、令和8年(2026年)4月末までに施行がされることになっています。

所有不動産記録証明書の交付請求先となる登記所(法務局)については、今後法務大臣により指定される予定です。

また、所有不動産記録証明書の交付の手数料の金額等についても、今後政令等において定められる予定です。