単元株式数の登記と定款の定めについて

投稿日: 2022-07-15

はじめに(単元株式数とは)

会社は、定款で定めることにより、単元株式制度を導入することができます。
単元株式数とは、一定の数の株式をもって株主総会又は種類株主総会において1個の議決権を行使することができる一単元の数をいいます。
ちなみに、上場会社では、100株の単元株式数が定められることが一般的です。

単元株式数は自由に設定できるのか

単元株式数を設定又は変更するケース

会社法上、単元株式数は、1000及び発行済株式の総数の200分の1に当たる数を超えることはできません(会社法第188条第2項・会社法施行規則第34条)。
(発行済株式総数が200株未満の会社は、単元株式を設けることはできません。)

一方で、種類株式発行会社においては、種類株式ごとの発行済株式総数(各種の株式の数)の200分の1に当たる数を超えることは可能とされています。

発行済株式の総数が減少するケース

自己株式の消却により発行済株式の総数が減少することになります。
その結果、単元株式数が発行済株式の総数の200分の1を超えることもあります。
その場合には、あわせて単元株式数を減少する変更が必要となります。

会社法上必要となる決議等について

単元株式数の設定・増加のケース

株主総会の特別決議により、単元株式数を設定・増加する定款変更が必要となります。
ただし、以下の要件を満たす場合には、取締役の決定(取締役会設置会社では、取締役会の決議)により、単元株式数の設定・増加させることが可能です(会社法第191条)。

  1. 株式の分割と同時に単元株式数を設定・増加させること
  2. 定款変更の前後において各株主の議決権が減少しないこと

また、単元株式数の設定時には、取締役は、株主総会において、単元株式数を定めることを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法第190条)。

単元株式数の減少・廃止のケース

取締役の決定(取締役会設置会社では取締役会)により、単元株式数を減少・廃止することが可能です。
株主の議決権は減少せず、特段の不利益がないため、株主総会の決議は不要とされています。
ただし、この場合には、定款変更の効力発生後遅滞なく、株主に対して通知又は公告が必要となります(会社法第195条第2項・第3項)。

種類株式発行会社のケース

単元株式数の設定・変更・廃止により、ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合があります。
その場合には、定款に別段の定めがない限り、種類株主総会の特別決議が必要となります(会社法第322条第1項第1号・第2項但書)。

ある種類にのみ単元株式数を定めることの可否(種類株式発行会社の場合)

種類株式発行会社においては、単元株式数は、株式の種類ごとに定める必要があります。
もちろん、各種類株式につき単元株式数を同じとすることも認められています

それでは、1の種類株式に限り単元株式数を定めることは認められるのでしょうか。
学説上は、これを可能とする見解もあります(前田・会社法入門(第12版)138頁)。
一方で、「特定の1種類の株式のみに単元株式数を設定した旨の決議の記載のある株主総会議事録を添付してされた登記の申請は受理されない」という見解もあります(民事月報Vol.57.6P106)。

ところで、単元株式数は、必ずしも2以上の数である必要はありません
そのため、実務上は、単元株式数を設けたくない種類株式については、単元株式数を「1株」とすることで不都合を回避できます。

例えば、以下のような形で単元株式数を設定することになります。

単元株式数
A種類株式  1株
B種類株式 10株

登記に必要な書面・登録免許税について

単元株式数に関する登記の必要書類・登録免許税は、次のとおりです。

必要書類(株主総会の決議による単元株式数の設定・変更・廃止)

  • 株主総会議事録
  • 種類株主総会議事録(ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合)
  • 株主リスト(株主総会・種類株主総会ごとに必要)
  • (代理人による申請の場合には)委任状

必要書類(取締役の決定・取締役会の決議による単元株式数の設定・変更・廃止)

  • 取締役の決定書(又は取締役会議事録)
  • 種類株主総会議事録(ある種類株主に損害を及ぼすおそれがある場合)
  • (代理人による申請の場合には)委任状

登録免許税(単元株式数の設定・変更・廃止)

設定・変更・廃止のいずれも、登録免許税は、申請1件につき3万円となります。