公正証書遺言等の検索制度について

投稿日: 2022-07-12

はじめに

相続が発生時には、遺言書の有無によって遺産の帰属先や手続きの進め方に違いが出てきます。
そのため、遺言書の存否は、相続人その他利害関係人にとっては重大な問題となります。
一方で、遺言の存否について相続人側で把握できていないことも少なくありません。
そのような場合のために、遺言書の存否を調査する手段が存在します。
そこで、今回は、公正証書遺言等の検索制度についてご説明します。

検索の対象となる遺言書とは

昭和64年(1989年)1月1日以降公証役場(公正証書)で作成された遺言が検索の対象となります。

次に、対象となる遺言書の種類としては、公正証書遺言秘密証書遺言があげられます。
(これらは、いずれも作成の段階で公証人が関与して作成される遺言書です。)

公正証書遺言の情報について

遺言書の作成そのものを公証人が行い、遺言書の原本は、公証役場で保管されます

秘密証書遺言の情報について

遺言書を作成した事実を公証人が証明するものの、遺言書の原本は遺言者自身で保管する必要があります。
そのため、遺言書の原本自体は、別途探す必要があります。
(遺言書を作成したという事実そのものは、公証役場で把握されています。)

遺言書の存否の照会請求について

日本公証人連合会の遺言書検索システムを用いて、遺言書の存否の照会請求ができます。
連合会のデータベース上には、次のような遺言書に関する情報が管理されています。

  • 遺言者の氏名及び生年月日
  • 遺言書の作成日
  • 公証役場名
  • 公証人名

遺言書の存否の照会請求を行う窓口とは

日本公証人連合会のデータベースで一元管理されているため、全国の公証役場において検索が可能です。
つまり、どこの公証役場で作成された遺言であっても、最寄りの公証役場で検索が可能です。

ただし、遺言書検索システムで検索できるのは、遺言書の有無や保管先の公証役場等の情報に限られます。
保管先の公証役場が判明したら、遺言書の謄本の交付請求をして、具体的な遺言の内容を確認しましょう。

なお、現在では、郵送による請求も認められています。

遺言書の存否の照会請求をすることができる方

  1. 遺言者本人
  2. 利害関係人(法定相続人・受遺者・遺言執行者等)
  3. 上記1ないし2の者から委任を受けた代理人

なお、遺言者本人の生存中は、遺言書の存否の照会請求は、遺言者本人にしか認められません。
(相続発生前の(推定)相続人からの請求は認められません。)

遺言書の存否の照会請求の際の主な必要書類

遺言者本人が請求する場合

  • 遺言者本人の本人確認資料

※遺言者本人の印鑑証明書・実印の要否については、直接公証役場へご確認ください。

遺言者本人の代理人が請求する場合

  • 遺言者からの委任状(遺言者の実印を押印)
  • 印鑑証明書(遺言者の実印に関するもの)
  • 本人確認資料(代理人のもの)

※代理人の印鑑証明書・実印の要否については、直接公証役場へご確認ください。

利害関係人から請求する場合

  • 遺言者本人の死亡を証する書類(除籍謄本等)
  • 利害関係を証する書類(相続人であれば、相続人であることを確認できる戸籍謄本等)
  • 本人確認資料(利害関係人のもの)

※利害関係人の印鑑証明書・実印の要否については、直接公証役場へご確認ください。

利害関係人の代理人から請求する場合

  • 遺言者本人の死亡を証する書類(除籍謄本等)
  • 利害関係を証する書類(相続人であれば、相続人であることを確認できる戸籍謄本等)
  • 利害関係人からの委任状(利害関係人の実印を押印)
  • 印鑑証明書(利害関係人の実印に関するもの)
  • 本人確認資料(代理人のもの)

※代理人の印鑑証明書・実印の要否については、直接公証役場へご確認ください。

費用(遺言書の閲覧ないし謄本の交付請求)

  • 遺言書の閲覧を希望する場合:200円
  • 遺言書の謄本請求を希望する場合:証書の枚数×250円

※遺言書の検索自体については、費用はかかりません。

終わりに

自筆証書遺言については、遺言書保管所(法務局)における保管の制度の対象となります。

ただし、遺言書保管所(法務局)に保管申請をしていない自筆証書遺言であれば、別途調査が必要となります。
具体的には、遺言者本人が遺言書を保管していると思われる場所(自宅の金庫、タンス、金融機関の貸金庫等)を調べることが考えられます。

相続の手続きを迅速かつ円滑に進めるために、早めに遺言書の存否を確認しましょう。