株主名簿管理人の登記と定款の定めについて

投稿日: 2022-07-20

はじめに(株主名簿管理人とは)

株主名簿管理人とは、株式会社に代わって、株主名簿・新株予約権原簿・株券発行会社における株券喪失登録簿の作成・備置き・その他のこれらの関係事務を行う者をいいます(会社法第251条)。
株式会社は、株主名簿管理人を置く旨を定款で定め、当該事務を委託することができます。
株主名簿管理人の資格については、特に制限されていません。
ただし、実務上は、証券会社や信託銀行等が株主名簿管理人になる例がほとんどです。

株主名簿管理人の設置の手続き

まず、株主名簿管理人を新たに設置するには、以下の手続きが必要になります。

  1. 株主総会の決議(特別決議)により、株主名簿管理人を置く旨の定款変更を行う
  2. 取締役の決定又は取締役会の決議により、事務委託契約に関する事項を定める
  3. 会社と株主名簿管理人との間で事務委託契約を締結する

登記手続きでの必要書類(添付書類)

次に、株主名簿管理人に関する登記手続きにおいて必要となる書類は、以下のとおりです。

株主名簿管理人の設置・変更(交代)の場合

  • 定款(株主名簿管理人を置く旨の定款の定めが反映されたもの)
  • 取締役の決定書又は取締役会議事録(事務委託契約に関する事項を取り決めたもの)
  • 株主名簿管理人との間の契約を証する書面(事務委託契約書等)
  • (司法書士等に委任する場合には)委任状

※株主名簿管理人の変更(交代)の場合にも、上記と同様の書面が必要になります。

株主名簿管理人の廃止の場合

定款変更により株主名簿管理人の定めを廃止した場合

  • 株主総会議事録(株主名簿管理人を置く旨の定款の定めを廃止する決議がされたもの)
  • 株主リスト(上記株主総会時点の株主に関するもの)
  • (司法書士等に委任する場合には)委任状

会社から株主名簿管理人との契約を解除した場合

  • 取締役の決定書又は取締役会議事録(事務委託契約解除を取り決めたもの)
  • (司法書士等に委任する場合には)委任状

株主名簿管理人から契約を解除した場合

従前の株主名簿管理人から契約を解除した場合には、添付書面は不要となります。
(ただし、司法書士等に委任する場合には、委任状が必要となります。)

なお、この場合には、登記申請書(代理申請の場合には委任状)に、従前の株主名簿管理人から契約を解除した旨を記載する必要があります。

登記の登録免許税

株主名簿管理人の設置の場合

申請1件につき3万円になります。

株主名簿管理人の変更・廃止の場合

申請1件につき3万円になります。

登記の申請期限(登記期間)

登記の申請期限(登記期間)をまとめると、以下のとおりです。

株主名簿管理人の設置の場合

株主名簿管理人を事実上置いた日(事務委託契約の締結日)から2週間以内となります。
期間の起算点は、株主名簿管理人を置く旨の決議日ではありません。

株主名簿管理人の変更の場合

後任の株主名簿管理人を事実上置いた日(後任者との事務委託契約の締結日)から2週間以内となります。

株主名簿管理人の廃止の場合

株主名簿管理人を廃止した時点(株主総会決議日・契約解除日等)から2週間以内となります。

終わりに

上場会社のほか、中小企業やベンチャー企業でも上場準備の中で株主名簿管理人を設けることがあります。
もっとも、証券会社や信託銀行が株主名簿管理人の登記をしてくれるわけではありません。
株主名簿管理人を設ける場合には、自社で登記を行うか、司法書士へ登記手続きを依頼する必要があります。
株主名簿管理人を置くことが決まったら、すみやかに登記手続きの準備も進めましょう。